「戦闘破壊学園ダンゲロス」架神 恭介

魔人どものハルマゲドン

「戦闘破壊学園ダンゲロス」架神 恭介
筑摩書房、750ページ
学園を舞台に妄想が炸裂する極限能力バトルの怪作。


生徒会vs番長グループ

人工島にある私立希望崎学園は警察権力が介入しない自治特区です。生徒会と番長グループの対立が先鋭化し、学校公認のハルマゲドンに突入します。「自己の認識を他者に強制する力」を持った学生魔人約60人が、問答無用の命の奪い合いを始める。

四つ巴の激戦

ド正義卓也率いる生徒会が、邪賢王ヒロシマ率いる番長グループを圧倒します。しかし、契約によって無限の攻撃力と防御力を持つ「転校生」3人も参戦して、戦況は複雑化する。さらに、学園自治法を反故にして陸上自衛隊の魔人小隊が突入、すべての魔人を殲滅しようとします。

過激な描写の連続

物語の冒頭や幕間でRPGの小説化と明示されているので、メタ・フィクションということになるのでしょう。エログロ描写のオンパレードなので、そのエクスキューズの意味もあるのかな。インモラル魔人も建国を目指す権力志向の魔人も、みんなまとめて一掃されます。

魔人、滅ぶべし

生徒会30人、番長グループ29人、転校生3人、魔人小隊40人が全滅ですw 救いのない最期が多い。生き残ったのは両性院男女だけで、エピローグに百合っぽいオチが付きます。エピローグの後に、世界の成り立ちや転校生の行動の意味が明かされますが…。これは蛇足というか、毒消しを兼ねた付け足しのようなものです。

登場人物がものすごく多い

巻頭に校則、建物配置図、イラスト付き主要キャラ紹介があるのは親切。魔人が次々に登場し、それぞれが奇想天外な能力を有している。魔人とその能力名は「戦闘破壊学園ダンゲロス」に詳述されています。仕事とは言え、よく何十人分もの設定を考えるなあ。

少年の妄想を形にしてみる

登場人物は多いのですが、ゲームの駒なのでサクサク整理されていきます。はっきりした主人公のいない群像劇の雰囲気もありますが…。バトルフィールドを設定した後は、とにかくひたすら魔人同士の潰し合いです。「バトル好きの少年の妄想を形にしてみた!」そんな感じでしょうか。

たぎるリビドーとタナトス?

本書はシリーズ第1弾で、3冊(第2弾「飛行迷宮学園ダンゲロス」、第3弾「ダンゲロス1969」)まで出版されています。2次創作が無償で許諾されており、漫画化もされている。同人誌ではなく商業出版であることに首を傾げるほど、やりたい放題です。下品なドロドロの表現は読者を選びます。

選択肢は多いほうが良いのですが…

「魔人能力の多くが下劣、世界観が陳腐、キャラやエピソードがステレオタイプ」などなどの批判は承知の上。チーム対戦型異能力バトルをとことんやり尽くしています。個人的には標準レベルの平凡な作品より、この手の尖った異色作が好きです。でも、やっぱり同人誌向きかなあ(笑)。

設定はかっちりしている

1990年代前半にブームだったリプライ作品の一種なのかも。元になるTRPGの設定(歴史的背景や世界観など)は固まっているようで、ストーリーは破綻せずに完結します。学園ハルマゲドンも国家権力から見ればコップの中の嵐、そして世界自体がスケールの大きな魔人の頭に浮かんだ泡のようなもの。きれいにまとまっています。

許容限界に挑戦

ただ、ゲーム的ラノベなので、事件や登場人物に共感や感情移入するのは難しい。モラルの規制を取っ払ったネトネトの場面も1回読めばお腹いっぱいになります。ライトノベルに許される限界を探る実験的な作品としての意味はあると思うけど、作品の完成度は微妙です。

パトス全開のインパクト

「読者よりも作者の趣味を優先→想定読者層が狭い自己満足な作品」と考えれば評価はマイナス、「パトスをぶちまけてラノベの限界を試す→マニアックなファンが支持してシリーズ化」と考えればプラスなのかな。再読はしそうにないけれど、インパクトがありました。